連載 星夜の逸品 -児玉光義-

ドームなび GOTO投映支援サイト

その後の「コメット号」7/9
~数奇な運命を辿ったダイアナ号とコメット号(その3)~

更新日 2014.12.25

謎のカストル号

(写真)ドイツ式の赤道儀

↑ドイツ式の赤道儀

現在、小型天体望遠鏡の赤道儀の架台は、ほとんど総てドイツ式の赤道儀です。ドイツ式の赤道儀は、赤経軸(極軸)と赤緯軸の2軸からなるシンプルな構造です。赤経軸と地球の自転軸(地軸)とが平行になるように架台を設置し、赤経軸と赤緯軸とを回転して目的の天体を導入した後、赤経軸を地球の自転とは反対方向に、自転の速度と全く同じ速度で回転して天体を追尾するという方式のものです。この形式の赤道儀は、1826年にフラウンホーファーが考案したもので、「フラウンホーファー型」とも呼ばれています。強いて欠点を挙げるとすれば、鏡筒とバランスをとるための錘が必要なくらいです。

(写真)単軸赤道儀「エロス号」

↑単軸赤道儀「エロス号」

それでは、単軸赤道儀はどうでしょうか。その構造は、前に掲げた写真のように更にシンプルです。
球状の軸受けから赤経軸(極軸)が出ていて、その先端に経緯台がついているという構造です。分かり易く言えば、経緯台を緯度の分だけ傾けたものです。従って、経緯台の方位回転が赤経回転に、高度方向の回転が赤緯方向の回転にあたります。ただし、鏡筒のバランスは、ドイツ式のように1軸にはできませんので、赤緯の回転軸から左右に分けて2つ出ています。赤経と赤緯の2軸を回転させて天体を導入し、赤経軸を回転させて追尾しますが、赤緯の微動はタンジェント・スクリューで行いますから範囲が限られます。
しかし、いかにもバランスが悪そうですが、高価なベアリングなどほとんど使わずに済み、相当なコストダウンになったものと思われます。戦後の物不足のために考え出されたまさに苦肉の策といったところでしようか。

< 6.にもどる 8.にすすむ >

このページのトップへ